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近年、宇宙ビジネスが新たな産業分野として期待されています。 宇宙ビジネスとは、民間のロケットや人工衛星を活用したサービスなど、宇宙空間をビジネスとして活用するもので、この10年ほどで急速に市場規模が拡大しています。東京計器でも2021年に策定した東京計器ビジョン2030において、宇宙事業を当社の新規成長事業として設定しました。2022年には、人工衛星の開発・運用を行う、衛星データのソリューションプロバイダーである株式会社Synspective(以下:Synspective)と協業を開始し、量産体制を整えるために衛星組立棟の建設に着手。宇宙ビジネスへの参入へ大きく動き出しています。
新事業には設備投資だけでなく、開発・製造を担っていく人材への投資も欠かせません。東京計器では、Synspective社に次代を担う技術者4名を派遣し、衛星組立に要求される高い技術の習得を目指しています。彼らと共に研究などの作業を行っている場所は、日本における宇宙開発の最先端、筑波宇宙センター。この研究開発施設を舞台に、Synspectiveと共に挑む衛星開発の最前線と、当社の宇宙ビジネスについてクローズアップいたします。
SAR衛星とは
光学衛星がカメラなどの光学センサによって色や形を識別するのに対し、レーダーの一種である合成開口レーダー(SAR)を用いたSAR衛星は、マイクロ波の反射波を受信・解析することで昼夜・天候に左右されずに、目視では確認が難しい地盤や構造物の微細な様相変化や変動量の把握が可能。この特性を活かしたインフラ保全や防災、農業など幅広い分野への活用が期待されている。
衛星開発の最前線である試験設備
Synspectiveは、筑波宇宙センターの一画にある建屋を借用して研究を行っています。この建屋は、JAXAが保有する筑波宇宙センターの環境試験設備の一つで、衛星の開発に必要な設備や作業場を併せ持つほか、組み立てに十分な空間を確保しています。ここでは当社を含め、衛星組立に必要な技術を持つパートナー企業4社、総勢3-40名ほどの技術者が集い、各々の技術力とノウハウを結集して衛星の組立を行っています。また研究開発にはこの設備だけでなく、筑波宇宙センター内にある宇宙空間を想定した様々な試験装置も利用。 宇宙空間での使用に耐えるには、打ち上げ時の強烈な振動や、真空状態、極低温、太陽光による高熱など、地上では確認が難しい過酷な状況をいくつも乗り越える必要があります。筑波宇宙センターにはこれらの試験が行える最新設備がまとまっており、各種データも蓄積されています。そのため、宇宙ビジネスを始めて間もない企業にとっては大変研究を進めやすい環境となっているのです。
*JAXA…宇宙航空研究開発機構
筑波宇宙センターについて(HPより抜粋)
筑波宇宙センターは筑波研究学園都市の一画にあり、1972年に開設しました。約53万平方メートルの敷地に、研究学園都市にふさわしい緑ゆたかな環境と最新の試験設備を備えた総合的な事業所です。当センターでは、JAXAの推進する活動のうち、
引用:https://www.jaxa.jp/about/centers/tksc/index_j.html
チームワーク抜群の出向者4名
筑波宇宙センターで行われている衛星組立をスムーズに東京計器那須工場に移管すべく、20 代の若手から50 代のベテランまで、合計4 名の当社社員がSynspectiveに派遣。それぞれが組立や品質管理、工程の標準化といった異なる役割を担いながら研鑽を積み、当社の宇宙ビジネスを切り開くリーダー的存在になることが期待されています。 4名が同じ作業場所で働いていることは少ないですが、団結力はどの企業にも引けを取らない自信をもっています。互いを尊重しつつも遠慮なく何でも言い合い、「東京計器の新規事業を成功させる」と常にベクトルを一つにしています。その姿は側から見ても、「コミュニケーションが活発で連携もよく、宇宙事業にかける想いの強さを感じます」(Synspective : 川井様)とのこと。現場では情報共有ツールを積極的に活用されていましたが、対面での報連相も大切にするバランス感覚が、年齢や職位の差を感じさせないチームワークを生み出しています。
この現場で身に付けたいのは「宇宙品質」
「地上のものと異なり、一度宇宙に送ったものは二度と修理に行くことができない。そのため絶対に壊れない、完全であることが求められるのが宇宙品質です」 衛星は過酷な環境でも壊れることなく、数年にわたって稼働し続ける必要があるので、不具合が発生しないための厳しい検査項目や試験装置のレンタル先などをノウハウとして得る必要があります。 「宇宙品質の維持の難しい所は、絶対壊れないことが前提として存在するにも関わらず、宇宙空間の完全再現が地上では不可能であることです。稼働する場所の完全再現ができないので、何がどこから壊れやすいのか、発生したごみがどのように集まるのかといった検証がとても難しい。さまざまな試験を重ね、生産現場でしか知りえない細かな情報を開発側に伝えるだけでなく、当社の知識としても蓄積しています」 Synspectiveは現場に設計部門を置いているため、生産現場の声を即座に設計変更に反映するといったフットワークの軽さが強み。自分の気づきをすぐに設計に反映してくれるからこそ現場からの貴重な情報が多く挙がり、集合知として開発の迅速化・効率化に繋がっているようです。高い品質要求に応えるための検査・チェック項目などを経験として身に付けるだけでなく、量産に向けてここで得た経験をマニュアル化し、形式知にすることも、彼らの重大なミッションなのです。
「東京計器には、宇宙を相手にできる充分な現場の実力がある」
東京計器が衛星組立の現場に選んだのは、防衛機器や海上交通機器、情報通信機器などのさまざまな最先端技術が集まる那須工場。ここに新しく建設中の衛星組立棟は、小型衛星の複数機同時生産に十分な広さの組立作業エリアを備え、竣工は2023年5月を予定しています。筑波宇宙センターでの他流試合を通じて彼らが実感したのは、東京計器の高い組立技術と品質管理レベル。 「ここで得たノウハウをしっかり持ち帰ってもらい、衛星組立に従事される方々に伝授してもらえれば、東京計器での衛星量産が可能であると感じました(Synspective : 川井様)」。 現状、国内における人工衛星はオーダーメイドが基本で、量産を行っている企業はほとんどありません。東京計器ではこれを好機と捉え、宇宙事業を進めています。「Synspective社との量産実績は、確実に当社宇宙事業を進める上でのベースの技術になると思います。ここでの実績をもとに東京計器の知名度を上げ、宇宙ビジネスをより活性化していくことができれば嬉しいですね」
国内で類を見ない東京計器による衛星の量産が間もなく、軌道に乗ろうとしています。
Views No.128 PDF版(約6.2MB)
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