サステナビリティ方針
東京計器グループは、計測、認識、制御の独創技術により、社会からの信頼を得ながら、
「持続可能な社会の実現」と「中長期的な企業価値の向上」を目指します。
1.顧客や社会の潜在ニーズを掘り起こし、事業活動を通じて課題を解決し続けます。
2.サプライチェーン全体において、環境負荷の低減と人権の尊重に努めます。
3.多様な人材が個々の力を発揮して成長できる企業風土を醸成し続けます。
社長メッセージ

世界経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の普及に伴う行動制限の緩和により回復傾向が見られたものの、長期化するサプライチェーンの混乱など先行きが不透明な状況が続いています。加えて、近年は地球規模での気候変動による影響が懸念され、自然災害も激甚化、頻発化しています。これ以上の悪化を食い止めるためにも、脱炭素社会実現への歩みを止めるわけにはいきません。また、社会が多様化する中、すべての人が尊重され、安心して暮らせる社会の実現に寄与することが、企業には今強く求められています。
2030年のあるべき姿を定めた「東京計器ビジョン2030」
東京計器グループでは、2021年度初めに2030年の社会を予想し、そこから事業を通じて解決していくべき社会課題として「地球環境を護る」、「社会生活の安全と人々の健康を確保する」、「少子高齢化社会の課題を克服する」、「AI・ICT革命のキープレーヤーとして未来を創造する」、「モビリティ社会を進化させる」の5つの事業領域を定義しました。さらに、これらの社会課題の解決に向けて「東京計器ビジョン2030」を策定し、現有の事業や技術を事業強化領域に照らし合わせて成長ドライバー候補を設定しました。当ビジョンをもとに、社会ニーズの急激な変化に応え、SDGsを切り口とした新たな「グローバルニッチトップ事業」を創出して、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るステージへの転換を目指します。
進行中の新規事業の例を挙げますと、「地球環境を護る」においては、カーボンニュートラルに向けた環境課題の解決をテーマに、GHG(温室効果ガス)排出量削減に関わる事業に取り組んでいます。現在は、水素関連事業として水素ステーション向けに油圧駆動の水素圧縮装置を提供しており、今後は水素関連機器の研究開発をさらに進め、事業の幅を広げてまいります。
また、「社会生活の安全と人々の健康を確保する」という領域の一例としては、宇宙関連事業を通じた災害対策への貢献が挙げられます。その端緒となるのが、当社がマイクロ波増幅器を提供している小型SAR(合成開口レーダー)衛星です。合成開口レーダーは、地表にマイクロ波を照射し、その反射波を受信して画像化するレーダーで、遠く宇宙から取得した衛星画像データを解析することにより地震や洪水などの災害対応に役立つと期待されています。当社のマイクロ波増幅器は衛星の心臓部に搭載されていますが、さらに当社にて衛星全体の組立までも担うべく、現在、那須工場内に組立用の新工場棟の建設を進めています。
一方、鉄道事業においては、「少子高齢化社会の課題を克服する」「AI・ICT 革命のキープレーヤーとして未来を創造する」といった領域で、人手不足が深刻な鉄道保線要員をサポートし、鉄道保線のさらなる安全と効率化を両立するために、AI を組み入れた新しい鉄道保線検査装置の開発を進めております。
東京計器ならではの価値を生み出すためのサステナビリティ推進体制
さまざまな事業を持つ当社グループは、その多様性を調和させて発展してきたところに特徴があります。そのため、サステナビリティを考える際にも、「東京計器らしさ」とは何なのかを改めて見つめ直し、新しい発想を引き出したいとの考えに立って体制の構築を図っています。企業のサステナビリティ活動は、ともすると定型的な活動になってしまいがちですが、当社グループならではの価値観、独自性、創造性などを備えた活動を実践していきたいと考えております。
当社グループのサステナビリティ活動の基盤となる組織がサステナビリティ推進室およびサステナビリティ委員会であり、トップダウンの活動体制として位置付けています。推進室を中心に、関係部門がサステナビリティ経営に纏わる方針や施策を起案し、私自身が委員長を務め、経営陣・執行役員で構成される委員会が審議・決定したうえで、全社への浸透を図っています。
2021 年度の主な活動として、当社グループと多様なステークホルダーの皆様との共通の重要課題である「マテリアリティ」の特定を行いました。2022年度からは、委員会のもとで関係部門が協調してマテリアリティに対する具体的な施策を検討、推進しています。また、他の活動例として、2030年度のScope1、2(自社による直接的/間接的温室効果ガス排出)における温室効果ガス削減目標を、政府が定めた産業部門の目標であるマイナス37%(2013年度比)とすることを決定しました。プライム企業として環境のために為すべきことは多岐にわたります。今後はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提案に沿った取り組みおよび情報開示の充実を進めてまいります。
また、サステナビリティ経営の推進においては、強力なトップダウンだけでなく、従業員一人ひとりが我が事として捉えて行動するボトムアップの行動も必要だという考えのもと、推進室の傘下に「未来創出推進課」を設置しました。同課は、現場レベルの業務効率改善に関わる提案活動を推進することと、従業員からの社会課題解決商品・事業のアイデアをトップの合意が得られるまでに昇華・実現させることをミッションとしています。未来創出推進課が社内外において環境や社会に貢献するためのさまざまな意見やアイデアが集まるハブとなり、125年を超える歴史の中で社内に脈々と息づいている改善への意識と社会貢献の実績を拡大していくことを期待しています。
ステークホルダーの期待に応えるために
当社は、成長へと大きく舵を切り、独創的な技術による社会的課題の解決にさらに注力するために、2022年4月にプライム市場へ移行しました。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードへの対応も進めており、人材育成やより高いガバナンス体制整備の実施状況についても、今後開示していく予定です。高いガバナンス水準を備え、環境や社会の要請に応える製品を提供していくことで持続的な成長につなげ、ステークホルダーの皆様のご期待に応えてまいります。今後とも、温かいご支援をお願い申し上げます。
代表取締役
社長執行役員

サステナビリティ担当役員メッセージ

東京計器グループがサステナビリティ経営の基礎となる組織(サステナビリティ委員会とサステナビリティ推進室)を新設して1年半が過ぎました。その間にも我々を取り巻く気候変動に係る状況は悪化の一途を辿り、2021年には温室効果ガス濃度、海面上昇、海水温度の上昇、海洋酸性化という4つの主要な気候変動指標が最高値を更新し、2030年前後には地球の平均気温が産業革命前に比べ1.5度上昇するというIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の予測は疑いのないものとなっています。このような地球規模での問題が進行している中においても、今年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻に端を発した国家間の軋轢により、化石燃料由来エネルギーに依存するリスクが顕在化するなど、脱炭素の動きは待ったなしの状態となっております。
このような環境下において、当社グループにおいても「環境配慮型社会の実現」をマテリアリティ(企業とステークホルダーの重要課題)の一つとして取り上げ対応していくこととなりました。当面は政府が定めた産業部門の目標である2013年度比で37%のGHG(温室効果ガス)排出量削減目標に合わせ、当社グループとしても37%削減を目標として取り組みますが、将来的には当社のサプライチェーン全体を含めた削減に努めてまいります。
当社グループでは上述した脱炭素に対する課題解決を含め、グループの持続的な企業活動を進めていくための考え方を明確にすることを目的として「サステナビリティ方針」を定め、内外にその考え方を示すことといたしました。詳細についてはこのレポートの中でお知らせいたしますが、この方針は将来にわたって当社グループが経営理念とともに企業活動を続けていくに当たっての核となる精神を示したものです。またサステナビリティ方針に沿った企業・事業活動をこの先の未来に向かって推進していくために取り組むべき課題を「マテリアリティ」として特定し、これらを地道に解決していくことで当社グループが目指す将来を実現してまいります。
社会や環境に貢献しながら当社グループの持続可能性を高めていくために、やるべきこと・やらなければならないことは山のようにありますが、これらを「やりたいこと」とするマインドチェンジを図りながら、今後も経営と全従業員が一丸となって当社グループのサステナビリティ経営の質を高めていく所存であります。
取締役執行役員 サステナビリティ推進担当
鈴木 由起彦
サステナビリティ推進体制
サステナビリティ推進室は、サステナビリティ経営に係る諸施策を当社グループの中心となって企画、推進します。
サステナビリティ委員会は、社長執行役員を委員長として、社内取締役、各担当執行役員から委員を選出しています。サステナビリティ経営に係る方針や施策などを審議、共有し、決定事項を遅滞なくグループ全体で実行するための会議体として機能します。また経営会議、取締役会に重要施策の起案や進捗等を報告します。