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サステナビリティへの取り組み

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サステナビリティ方針

東京計器グループは、計測、認識、制御の独創技術により、社会からの信頼を得ながら、
「持続可能な社会の実現」と「中長期的な企業価値の向上」を目指します。


1.顧客や社会の潜在ニーズを掘り起こし、事業活動を通じて課題を解決し続けます。
2.サプライチェーン全体において、環境負荷の低減と人権の尊重に努めます。
3.多様な人材が個々の力を発揮して成長できる企業風土を醸成し続けます。

社長メッセージ

事業の状況

 2022 年度の当社グループの事業環境は、各国の経済活動の再開が本格化したものの、資源価格の高騰や半導体等の部品供給不足や原材料価格高騰に加え、急激な為替変動やエネルギー価格の急上昇等、先行き不透明な状況が続きました。当社グループもこの影響を受け、最終的には増収となりましたが利益面では減益となり、油空圧機器セグメントに属する油圧制御システムカンパニーでは減損損失を計上しました。
 2023年度も厳しい事業環境が続くことが予想されていますが、各カンパニー、子会社ともに、挑戦的な事業計画を立案し、取り組みを進めています。また、成長ドライバーの育成も積極的に進めています。業績面では前期比増収増益の計画とはいえ、2021年度からの3ヶ年中期事業計画は目標未達の見通しとなりますが、次期中期事業計画での飛躍に向け、着実に準備を進めていきます。

「成長」に舵を切る

 当社グループの歴史は、明治時代の航海計器の開発に遡ります。ジャイロコンパスを中心としたジャイロ応用技術に始まり、慣性センサー応用技術、マイクロ波応用技術、超音波応用技術、油空圧制御技術と、いくつものコア技術が生まれ、現在の事業形態へと発展してきました。これらのコア技術は、事業間で共有し融合され、当社グループの成長の源泉となる独創技術を形成しています。これまで、国内のお客様を中心に、まさに膝詰めといえるような距離感での共同開発をしながら、お客様の要望やご注文に真摯に対応し、「ニッチトップ」と呼ばれる多くの製品を生み出し、事業領域も広がってきました。そのため、一つの事業が景気などの外部環境により苦境となっても、他の事業領域でその減少分を補完することで、安定した業績を出し続けることができました。
 しかしながら、現在の株式市場では、伊藤レポートにもあるように、ROE8%を目標に掲げ成長していく企業グループが求められるようになりました。さらに、東京証券取引所(東証)の市場再編が、この動きを後押ししています。一方、「失われた30 年」と言われるように、製造業における日本の産業競争力が低下傾向にある中、国内市場だけに焦点を当てていては限界があります。
 こうした状況の中、当社グループでは、今後「成長」に大きく舵を切り、SDGs を切り口とした「グローバルなニッチトップ事業」を創出し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るステージへ転換していくため、2021 年6 月、「東京計器ビジョン2030」を策定しました。同時に、2021年度からスタートした3ヶ年中期事業計画を、10 年後の目標を実現するための基盤強化・基礎固めと位置づけ、新たな市場を開拓する成長ドライバーの発掘・絞り込み・育成に注力しています。
 当社グループが新たに挑戦していく事業の候補として設定した5つの成長ドライバーの一つに「宇宙事業」があります。近年頻発する台風や猛暑、さらには線状降水帯による大雨などの自然災害は、GHG(温室効果ガス)排出量の増加に伴う地球温暖化が要因の一つと考えられていますが、そのような災害の把握に、小型SAR(合成開口レーダー)衛星の活用が期待されています。小型SAR 衛星は数十基の衛星群( コンステレーション) で運用するため、当社グループでは機体の持続的な更新需要に対応する生産拠点として、栃木県の那須工場に「宇宙棟」を建設しました。運用にはまだ時間を要しますが、新たな成長分野である宇宙関連事業を 通じた防災、減災への貢献に向けて一歩ずつ着実に進んでいます。

事業戦略と一体化したサステナビリティ経営

 当社グループは、「東京計器ビジョン2030」の実現に向けたサステナビリティ経営を進めています。私は、サステナビリティ経営が単なるスローガンでなく、事業の成長性や永続性をもたらすものでなくてはならないと考えています。当社グループの従業員は、お客様とともに、独創技術で時代を拓いてきました。しかし、今のままの事業内容や手法では、売上・利益は横ばいのままです。そこで、社長就任以来、全従業員に向けた訓示や管理職とのミーティングの中で経営環境のキーワードを説明し、厳しい事業環境を打破して成長する大切さを、繰り返し強調してきました。特に、短期的収益のための既存事業の強化に加え、中長期の成長を目指す成長事業の推進の2本立て経営の重要性と、挑戦意欲あふれる企業風土の創出の重要性を一貫して言い続けてきました。
 さらに、サステナビリティ推進室のメンバーが各工場、営業所等に訪問して説明会を開き、サステナビリティ経営の根幹となる方針や施策を説明し、我々が目指すサステナビリティ経営が事業の成長性や永続性をもたらすものであることを直接伝えました。重要なのは、事業の持続可能性に関する「現場目線の課題」についての対話を通じて、事業戦略と一体化したサステナビリティ経営の理念の浸透を図ることです。サステナビリティ経営とは何か、それに対して自分が何をやらないといけないのかというところまで落とし込み、個々人が理解できないことには、恐らく力にはなっていかないのだと思っています。

 こうした従業員への理念の浸透や方向性を合わせる努力とともに、新たな成長分野を目指した提案や新市場の開拓など、積極的に挑戦するという思考を目指した人事評価や目標管理の制度改定を進めています。徐々にではありますが、こうした制度改定を通した意識改革の成果を肌で感じています。

サステナビリティ経営に根差したマテリアリティの特定と活動

 サステナビリティ経営を進めるうえで、当社グループとステークホルダーの皆様との共通のマテリアリティ(重要課題)として特定した「4つのマテリアリティ」を強力に推進していくため、執行役員の中からマテリアリティごとの推進責任者を選任しました。マテリアリティの活動状況は、私が委員長を務めるサステナビリティ委員会で各責任者が報告した案件に対して、委員会が必要な指示や支援を行います。
 これまでの主なマテリアリティの活動をご紹介しましょう。
 「社会課題を解決する商品の提供」は、「東京計器ビジョン2030」で設定した成長ドライバーと既存事業の戦略に基づいた商品開発の取り組みを、社長室が中心となって取りまとめています。これに伴い、従業員一人ひとりが自らイノベーションを生み出す提案の場として新設した「未来創出推進課」を、2023 年4 月に社長室に新設した「新規事業推進室」の傘下に移しました。新規事業推進室は5つの事業強化領域を取りまとめ、未来創出推進課はそれ以外の新規事業の開拓を担います。それぞれの組織の役割を明確にしながら「社会課題の解決に貢献する新商品」の開発を推進していきます。
 「環境配慮型社会の実現」は、脱炭素型社会の実現が国際的な共通認識となった現在では、プライム市場上場企業として率先して実現していかなければならない極めて重要な課題です。当社グループでも2030年度のGHG排出量を2013 年度比で37%削減する目標を設定しました。当社グループにとっては挑戦的な目標ではありますが、生産担当役員が中心となって達成に向けた取り組みを進めています。従前から進めている省エネルギー設備の更新のほか、2022年度から再生可能エネルギー電力の調達を開始したことで、計画を上回る速度で削減が進んでいます。2023年度は太陽光発電設備を導入することが決定し、今後はGHG排出量削減のさらなる迅速化が期待できます。また、先に述べた「社会課題解決に貢献する新商品」の開発として、水素関連事業にも注力し、自社のみならず、社会全体のカーボンニュートラルに貢献していきます。
 「サプライチェーンマネジメントの強化」では、2023年4月に「パートナーシップ宣言」を行いました。東京計器は栃木県内に3 つの工場(那須工場、矢板工場、佐野工場)を持ち、各々での生産は、地元の協力企業を中心とするステークホルダーの皆様に支えられて成り立っています。「東京計器ビジョン2030」に向けた当社グループの持続的成長の実現に必要なのは、強固なサプライチェーンの構築です。そのためには効率性の改善はもちろんのこと、環境配慮型のサプライチェーンの構築など協力企業の皆様と一致協力し、持続的な共存共栄関係を築いていくことが必要です。当社グループと協力企業の皆様が共に成長できるよう、資材担当役員が中心となって強靱なサプライチェーンの構築を探索していくとともに、GHG排出量の削減や人権の保護などを含めたサプライチェーンマネジメントの強化を推進していきます。
 「多様な人材の活躍推進」では、「挑戦する風土」への改革を進めるため、「東京計器ビジョン2030」におけるバリューとして「飽くなき挑戦」というスローガンを掲げました。2022年度は新たに「挑戦をやめたら東京計器じゃなくなる」というキャッチコピーを作り、社内への浸透を進めています。また、多様な人材が活躍できる企業環境の構築については、人事制度の改定のみならず、人事総務部が中心となって各種の取り組みを進めています。当社グループにとっては、多様な人材こそが最大の財産です。従業員の成長を支援する資格取得の奨励や教育研修の充実、多様な働き方に対応できる各種制度の整備なども推進し、従業員エンゲージメントを高めていくことで会社の持続的な発展につながる好循環を生み出していきます。
 政府が示す「男女共同参画の推進」に当たっては、2023年6月に当社グループ初の女性社外取締役を迎え、経営陣においても多様性の向上を図りました。今後もプライム市場上場企業として多様性に関する取り組みを推進していきます。

次のステージに向けて

 当社グループの製品の多くは、お客様の製品に組み込まれています。それゆえに、表立って目立たない存在ではありますが、他社にはない独創技術を駆使することにより、120 年を超える長い間、世界の安全、安心を支えてきました。当社グループの従業員は、製造に関わる部門はもちろん、技術開発、品質保証、お客様との接点を担う営業・サービス、そして各部門の支援を行うスタッフなど、いずれの部門でも、この歴史と当社グループの製品が果たしてきた役割に誇りを持っています。無限の可能性を秘めた一人ひとりの能力がさらなる成長に向けて高まっていくことで、当社グループの未来は変わると私は確信しています。
 昨今は、上場市場においてPBR1倍割れの企業に対する東証の要請があるなど、企業の成長に対して注目が集まっています。当社グループは長らくPBR1 倍を割っており、ステークホルダーの皆様にはご心配をお掛けしています。私は、PBRやROEの向上には業績を上げること、これに尽きると考えています。そのためには、自社の技術力のさらなる研鑽に加え、企業間のアライアンスやM&Aなどにより、成長のスピードを加速していくことも必要です。
 あらゆる経営資源を活用して、持続的な成長を目指していきますので、ステークホルダーの皆様には、より一層のご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。



代表取締役/社長執行役員

サステナビリティ担当役員メッセージ



 2022年度は、ロシアのウクライナへの本格的な軍事侵攻が激化し、民主主義の基盤が大きく揺らいだ一年でした。このような時勢の中で開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議) は、脱炭素社会のためのさらなる化石燃料削減への合意なく閉会するに至りました。国家間での紛争はエネルギー消費を爆発的に増加させることにもつながり、サステナビリティの観点からは大きく後退した年となりました。
 しかしながら、地球規模の気候変動については、西オーストラリアでの大規模な山火事、インドなど南アジアにおける50℃を超える熱波、アルプスでの氷河の崩落、パキスタンでの大規模洪水など、人間の都合には関係なく自然災害が世界各地で猛威を振るっています。気温の上昇も加速しており、世界気象機関(WMO)の最新報告によると、気温の上昇幅が2027年までには1.5℃を超える見込みという危機的な状況に直面しています。

 このような環境の中、東京計器グループでは経営理念を継承しつつ、自社の「環境・社会・経済の持続可能性」を高めていくための指標としてサステナビリティ方針を制定しました。また、この方針に従いサステナビリティ経営を推進していくための4 つのマテリアリティを特定しました。このマテリアリティは、ステークホルダーの皆様からの期待と当社グループの成長にとって重要な将来にわたっての課題を反映させたもので、サステナビリティ経営を実践していく原動力となっていくものです。
 マテリアリティの取り組みについては、緒についたばかりであり具体的な目標や成果を示すには今しばらく時間がかかる状況です。しかし、これらマテリアリティの解決は「東京計器ビジョン2030」の実現を含む当社グループのサステナビリティ経営の核となる部分であることから、各取り組みの進捗を今年度のサステナビリティレポートからステークホルダーの皆様と共有していくこととしました。
 マテリアリティを通じた4つの目指す姿を実現することは決して簡単ではありません。しかし、特に気候変動への対応については喫緊の課題として我々の目前に突きつけられており、目を逸らすことができない状況です。環境への配慮という観点では、深刻な海洋汚染の原因となる梱包資材などのプラスチックごみ削減などにも企業の責任として取り組んでいく必要があります。当社グループでは、「東京計器ビジョン2030」に掲げた「飽くなき挑戦」というバリューにより、マテリアリティの実現に挑戦してまいります。


取締役執行役員/サステナビリティ推進担当
鈴木 由起彦

サステナビリティ推進体制

 サステナビリティ推進室は、サステナビリティ経営に係る諸施策を当社グループの中心となって企画、推進します。
 サステナビリティ委員会は、社長執行役員を委員長として、社内取締役、各担当執行役員から委員を選出しています。サステナビリティ経営に係る方針や施策などを審議、共有し、決定事項を遅滞なくグループ全体で実行するための会議体として機能します。また経営会議、取締役会に重要施策の起案や進捗等を報告します。