欧州有数の主要港をより安全に。
日本から世界に広がる高精度VTSレーダー
日々多くの船が行き交うオランダのスヘルデ川河口域には、安全と航行の効率を高めるためオランダ政府とベルギー政府が共同で運営するVTSスヘルデ(正式名称:Schelderadarketen)※1という航行管制を行う組織が存在します。東京計器は、VTSスヘルデにおける航行管制の更なる効率化と安全性を向上させたいというニーズに着目。高精度のVTSレーダー「SeaKu」※2を提案し、当社初となるVTSレーダーの海外納入を実現しました。
VTSレーダーとは
VTSレーダーとは、マイクロ波で船舶の位置や移動方向を捉えるレーダーです。管制官がレーダーで捉えた船影を、航行中の船に無線で情報を提供することで、海難事故防止や、航行の効率化に役立てられます。VTSレーダーは海上交通システムの目に相当するセンサであり、昼夜、天候状況を問わず24時間365日船舶の動きを捉える重要な役割を担っています。その原理はマイクロ波のビームをアンテナから送信し、そのマイクロ波が船舶などの目標に反射して同じアンテナで受信することで目標を捕捉するというもの。こうしたレーダーで得られた位置情報や電子海図、気象海象情報などをもとに管制官は船舶に対して適切な情報提供を行い、衝突防止、座礁などの海難事故防止や船舶航行の効率化に努めています。
※1 VTS(Vessel Traffic
Services:船舶通航支援等業務)。VTSスヘルデはオランダ政府のRijkswaterstaatとベルギー政府のFlemish Agency for Maritime and Coastal Services が共同で運営するVTS 組織。
※2 商品名。VTS向けKu帯固体化レーダー装置。
東京計器製レーダーは何が違うのか。
今回採用いただいた東京計器のレーダーは、Kuバンド(12~18GHz)という欧州で従来用いられていたレーダーよりもさらに高い周波数を発振します。レーダーにはモノを測定・識別する能力の細かさを示す「分解能」という性能があります。この分解能はマイクロ波の周波数とアンテナの大きさに比例するため、周波数を高く、アンテナを大きくするほど性能が向上します。しかしアンテナは常に回転させる必要があることや屋外に設置することを踏まえると大きさには物理的な限界があるため、より高い周波数を採用することで分解能を向上させました。
日本からオランダ、そして世界中の港へ向けて。
2021年12月、海外の仕様に合わせた評価試験や試運転などが完了し、設置工事が行われました。レーダーアンテナの全長は約9メートルにも及び、マイクロ波が広範囲に届くよう、120mもの高さがあるタワーの最上部に設置。
東京計器のVTSレーダーは既設のVTSシステムとの整合や、別のエリアに設置されているKuバンドより低い周波数のVTSレーダーとの見え方の違いといった細かな調整を行いながら本格稼働を開始しました。
欧州では河川を利用した内陸水路輸送が重要な役割を果たしており、37,000km以上の水路が数百の都市と工業地帯を繋いでいます。今後、スヘルデ河口での実績を基に、欧州の港湾及び河川における船舶交通管制市場に向け、VTSレーダー装置の販路拡大を進めてまいります。