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知られざる地下世界

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地下トンネルを掘り進むシールドマシン。その知られざる世界を見る-10

地下トンネルを掘り進むシールドマシン。
その知られざる世界を見る

上水道送水管を新設するためのトンネル工事が行われています。
この工事を請け負っているクボタ工建のご厚意によりトンネル掘削現場を取材する機会を頂戴しましたので、トンネル工事の主役となるシールドマシン(掘削機)と、その推進管理に活躍している東京計器のシールドマシン用 光ファイバージャイロコンパス(以下、トンネルジャイロ)についてご紹介します。

日本の都市部では用地確保や交通渋滞などのため、地面を掘り起こしてパイプを埋設する開削工法が難しく、モグラのように地下を掘り進む非開削工法が発展してきました。その非開削工法の一つ、シールド工法は、茶筒のような形状のシールドマシンが、その先端に付けられたカッターヘッドを回転させて前面の土を削り取りながら掘り進んでいく工法です。このシールド工事で重要となるのが計画線に沿って正確に掘り進めることです。しかし、地中には衛星からのGPS信号が届きませんので、カーナビのような便利な装置はありません。
そこで東京計器が開発したのがシールドマシン用のジャイロコンパスTMGシリーズです。搭載された高精度ジャイロコンパスとサーボ傾斜計によってマシンの姿勢角(方位、ピッチ、ロール)をリアルタイムで計測し、正確な姿勢制御を行うことによってシールドマシンを計画線通りに導くというシステムです。今回の工事では、心臓部に新開発の光ファイバージャイロを搭載したTMG-12Fをご採用いただき、シールドマシンの推進管理にご利用いただいています。

地下6m、直径2,000mmの地底空間で繰り広げられるミッション

地下6m、直径2,000mmの地底空間で繰り広げられるミッション

今回の現場は、直径2mのトンネルを全長648mに渡って掘り進むというものです。トンネルは地下の埋設物を避けるため、地表の道路の直下をトレースするように掘削していきます。道路にはカーブもありますので、この工事区間でも複数の曲線施工があります。トンネルジャイロは、こうした曲線や長距離施工時であってもマシンを止めずに、その挙動をリアルタイムで計測・出力できる優れた特長を備えています。
シールドマシンの内部は運転に必要となるさまざまな制御装置やカッターを回転させる駆動装置などで占められており、複雑な工作機械の内部に紛れ込んだかのような印象です。
シールドマシンの最前方部にはTMG-12Fのセンサ部が装備されています。トンネルジャイロによってシールドマシンの自動化が進みました。測量回数を大幅に減らすことができ、工期の短縮や、マシンの監視やコントロールが地上から行えるなど合理化が実現しています。また、シールドマシンは縦横10ミリの精度で掘削することが求められますが、こうした高いニーズにもトンネルジャイロは応えてくれています。

光ファイバージャイロを搭載したトンネルジャイロ

光ファイバージャイロを搭載したトンネルジャイロ

東京計器のトンネルジャイロTMG-12Fは、センサ部に3軸の光ファイバージャイロと加速度計を搭載し、正確な3軸姿勢角(方位、ピッチ、ロール)をリアルタイムで検出します。
ジャイロとは物体の角速度を検出するセンサの1つ。回転するコマの軸は常に宇宙空間に対して一定の方向を向き続ける性質をもち、一般的な機械式ジャイロはこの慣性の法則を用いて測定対象の物理的な運動を計測します。一方の光ファイバージャイロは光の干渉を利用してセンシングするのが特徴で、コイル状に巻かれた光ファイバーがセンサの役割を果たします。
光ファイバージャイロには振動に強く、静定時間も従来の機械式に比べて短時間なので素早く計測を開始できます。また、小型化しているので、機械式では使用できなかった小口径のトンネル施工にも対応できます。TMG-12Fは、シールドマシンの制御に必要な姿勢角の計測値が1/100度まで高精度に表示されるので、運転を預かるオペレータからも好評です。
トンネル施工も最終局面に入ってきました。ゴール手前には施工に高度なテクニックを要するS字カーブが待ち受けており、TMG-12Fの活躍はまだまだ続きます。

本コラムは、東京計器レポート Viewsの記事を抜粋、再編集しています。
広報誌全体はこちらからご覧ください。(PDF形式:約4.5MB)