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北極海での過酷な実証実験

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国産小型SAR衛星のキーデバイス。東京計器のマイクロ波パワーアンプが宇宙に羽ばたく!

舶用向けFOGコンパス
市場投入に向けて北極海で実証実験

北極圏のバレンツ海にある群島スヴァールバル諸島。
人が住む地としては最北端の地域で東京計器が新製品の実験を行いました。資源採掘などを行うオフショア船に向けて開発中の新型ジャイロコンパスの実証実験です。この新製品の開発背景や実験の様子をご紹介します。

FOGコンパスとオフショア作業船

FOGコンパスとオフショア作業船

船舶市場で使用されているジャイロコンパスは大きく分けて2種類あります。1つは機械式ジャイロコンパス。回転するコマを利用して北を指し示すものです。もうひとつは光学式と呼ばれる、レーザー光や光ファイバーを利用したジャイロコンパスで、光ファイバージャイロコンパス(以下、FOGコンパス)は光学式の仲間です。FOGコンパスは、機械式に比べ高価格のため、多くの商船は機械式を利用しており、東京計器が販売しているジャイロコンパスも多くは機械式です。しかし、資源採掘などを行うオフショア船などの市場ではFOGコンパスの需要があり、独占市場となっている他社の牙城を崩して新規市場を開拓すべく、今回東京計器もFOGコンパスの開発に乗り出しました。
FOGコンパスのメリットは大きく分けて2つ、静定時間の短さとメンテナンスフリーです。静定時間とは、ジャイロコンパスを起動させてから使用できるまでの時間のこと。この静定時間が機械式は3~4時間ほどかかるのに対し、FOGコンパスは僅か30分。また、稼働部がないため定期的なオーバーホールが不要という特長もあります。

船舶向けFOGコンパスの開発

船舶向けFOGコンパスの開発

船舶向けFOGコンパスの開発にあたっては、先行してトンネル掘進機用としてFOGコンパスを販売していた別部門とのコラボレーションにより、トンネル掘進機用FOGコンパスを小型化。国際規格に合うように電磁干渉対策、耐衝撃性といった改良のほか、測定精度も向上しました。さらに、搭載する加速度計を自社開発し、低価格な光ファイバーを使用した特殊な製法により徹底的なコストダウンも図っています。精度に関して、国際規格で求められる0. 75度secλ(λ=緯度)に対し、今回求められたのはその倍以上、機械式と同じ0.3度secλです。機械式で最も精度の高いものは0.05度secλです。まさに芸術品と呼べるレベル。実験の地を北極圏にしたのも、ジャイロコンパスの特性上の理由からです。ジャイロコンパスは地球の自転の力を利用して北を向く力(指北トルク)を出しています。そのため、北に行くほど自転の力に比例して指北トルクも弱くなり、緯度70度を超える場所ではジャイロコンパスの精度も影響を受けてしまうのです。しかし、FOGコンパスが目指すオフショア船市場は、まさに北極圏が舞台。近年、地球温暖化により夏場の一時期だけ北極海航路が通行可能になったことから、このエリアの資源採掘が注目を浴びています。こうした市場でも戦えるよう、今回、緯度8 0度の極限状態で実験が行われたのです。

北極実験スタート! 壮絶なる船酔いとの戦い・・・

北極実験スタート! 壮絶なる船酔いとの戦い・・・

実験船はノルウェーの海洋調査船HELMER HANSSEN号。総全長63. 8m、定員30人乗りの観測船です。3週間の実験で、 FOGコンパスを2台搭載し、HANSSEN号に装備されている機械式との比較を行いました。今回の実験では、工場では確認が難しい厳しい気象・海象条件下で問題が発生しないことの確認と、船の停泊時および動揺時の方位安定性の確認が重視されました。停泊中は岸壁方位320度を仮の基準として機械式との相対評価、航海中は航跡の緯度・経度から直線航走時の方位を仮の基準として評価を行いました。
船酔いに苦しみながらの厳しい実験環境でしたが、最終日はオーロラも見られ、無事に実験は終了しました。
帰国後に実験結果の解析が行われました。FOGコンパスは高緯度でも静定時間が短く、船の動揺や旋回等の外乱があっても方位、姿勢出力が安定していることが解析結果から判明。厳しい環境下でも機械式と比較して運用上問題となるような異常は見られませんでした。
船舶市場のニーズが年々高度化するのに伴い、航海計器もさらなる進化が求められています。今後もさらなる新しい市場、新しい技術の開拓に挑んでいきます。