製造業においては、製品を作るための素材を選ぶ際やエネルギーを利用するときに、環境へのインパクトを最小限に抑えるように努めることが社会的責務といえます。私たちはこのような責務を果たしつつ事業活動を行うことで、持続可能な社会を実現します。
循環型社会の形成に対する考え方
東京計器グループは、自社の企業活動を含めた人間の
あらゆる文明活動が自然との共生のうえに成り立っているという認識のもと、持続可能な循環型社会の発展に向けた取り組みを推進しています。
廃棄物削減に対する具体的な取り組み
法令遵守
廃棄物の処理においては、法律や政令はもとより、工場や事業所の立地する自治体の条例に基づいて適切な処理を行っています。
3Rの推進
・Reuse
使用済み製品・部品(電子部品含む)の一部を、お客様の承諾を得て、リユースしています。
・Reduce
一部のお客様や当社の協力工場様との輸送に通い箱を採用し、ダンボールや梱包材などを廃棄物として出さない取り組みを行っています。また、洗浄油の再生装置やガラス加工排水の蒸発乾燥の利用によって、廃油、廃水の削減につなげています。
2021年度は、佐野工場におけるPCB廃棄と、那須工場におけるエッチング液の増加等により、産業廃棄物排出量が増加しました。なお、今回から東京計器プレシジョンテクノロジー(TPT)を含めています。
・Recycle
金属屑、廃油、廃紙類については、リサイクル可能な有価物として専門業者に引き取りを依頼するため、分別を徹底しています。
2021年度の有価物内訳は、金属屑469t、廃油19t、廃紙類54tでした。
産業廃棄物排出量
有価物排出量
使用済み洗浄油の再生利用
全社の廃棄物排出量のうち佐野工場だけで約2/3を占め、その約半分は水溶性切削液や洗浄油などの廃油です。これまでは、すべて専門業者に引き取りを依頼していましたが、廃棄量の削減を目的として、工場内に炭化水素系洗浄油の再生装置を導入したことにより、洗浄油の中に溶け込んだ油分を分離して廃棄できるようになりました。これにより、再生した90%の洗浄油は新油と同様に使用でき、資源の有効活用に貢献しています。削減量の2021年度実績は6,686Lとなり、2020年度から倍増しました。今後も廃棄量削減に活用していきます。
洗浄油再生装置による廃油削減量(2021年度)
加工不良による廃棄削減の取り組み
高圧の油圧製品に使用する素材は、強度の高いダクタイル鋳鉄が使われており、小径の穴あけ加工やタップ加工時に工具が折損する場合があります。これまでは製作中の部品全体を廃棄していたため、大きな部品が完成直前で不良になると、素材ロスだけでなく加工エネルギーのロスも大きく、さらに納期遅れにつながる可能性もありました。
工具および加工条件の改善だけでは完全に予防できないことから、佐野工場では部品を傷付けずに工具だけを取り除ける放電加工機を導入しました。
設備を導入してから1年間で、30kgを超える大型部品を含む約50個を廃棄せずに済み、作り直しに1個当たり1時間以上かかる加工設備の電力も節減できました。これからも限られた資源の有効利用を目指した取り組みを進めます。

設計出図のペーパーレス化
生産部署が利用する設計資料については、従来は設計部署が出図を担当し、図面と部品リストとを印刷して送付していました。しかしながら、この印刷業務は作業の手間がかかること、紙資源を出図ごとに大量に消費するなどが問題となっていました。このような課題を改善するため、全社を統括する技術情報管理部署で「出図管理ツール」を開発しました。
当社グループが生産する製品は、事業セグメント・拠点工場ごとにジャンルが大きく異なり、工程フローなども違うため、このようなツールを開発するのは難しいと思われてきましたが、サステナビリティの観点から早急な改善が必要と判断し、多くの部署の理解と協力のもと、短期間で開発を進めました。開発に当たっては生産部署の全面的な協力を得て、生産の流れを整理し、現行の業務に大きな影響を与えない範囲で工夫をこらし、第一弾として矢板工場の製品について汎用的な電子出図ルーチンを完成させることができました。
この結果、印刷枚数はA4サイズ換算で年間16万枚を削減、図面の出図および受領に関わる作業時間も年間約1,000時間の削減を実現できました。また出図進捗状況に関する問い合わせ対応が減ったという付随効果も表れています。
今後は、この成果を那須工場および佐野工場にも展開しながら継続的な作業改善に取り組み、省資源への貢献を進めていきます。
出図管理ツールの入力画面

化学物質適正管理に対する具体的な取り組み
対応方針
化学物質の中には環境や人体に有害な影響を与えるものがあるため、適正に管理し、環境や労働安全に配慮することは企業の社会的責任です。当社では自主目標を定め、化学物質の排出量の削減に取り組んでいます。
有害化学物質の代替材料への変更
各工場では、有害化学物質の代替材料への変更を積極
的に行っています。
- 油圧製品の洗浄剤
ジクロロメタンから炭化水素系洗浄剤へ変更
- シンナー
トルエン・キシレン含有からノントルエン・ノンキシレンへ変更
- 切削油
塩素含有から非含有へ変更
グリーンパートナーの取り組み
“ グリーンパートナー制度” とは、「地球環境にやさしい」ものづくりを推進するために、サプライチェーン全体で生産工程から有害物質を排除するための取り組みで、当社と発注先様・協力会社様・お取引先様(以下、お取引様)の各社が一体となって推進しているものです。
この取り組みでは、生産ラインにおいて有害物質の使用・混入などが起きないよう自主的に品質管理ができる能力を有し、当社の設けた管理基準を満たすお取引様をグリーンパートナーとして認定させていただき、製品もしくは部品ごとに行っている非含有証明書の提出あるいは含有化学物質調査の一部を不要としています。また、当社からグリーンパートナーに対し、部材等の含有化学物質調査・分析の支援、環境関連の情報の提供、環境関連の教育の支援等、各種サービスを提供しています。
有害物質の廃棄量削減
購入ロットの見直し、発注量の細分化による余剰在庫の削減、有害物質不使用製品の購入促進などで、有害物質の廃棄量削減に取り組んでいます。
佐野工場では、生産する油圧製品の塗装前工程で製品表面に付着した油分を除去するためにジクロロメタンを使用していました。しかし、ジクロロメタンは有害性の高い化学物質であるため、代替洗浄剤として有害性の低い炭化水素系洗浄剤への置き換えを決定し、専用の洗浄設備を社内で設計・製作しました。同設備は2021年1月から運用を開始し、2021年度のジクロロメタン使用量は495kgとなりました。2020年度からの比較では、95%の大幅削減を達成しています。
PRTR排出量:佐野工場 ※排出量のみ(移動量除く)
年度 |
ジクロロメタン(kg) |
トルエン(kg) |
2017 |
15,400 |
1,140 |
2018 |
18,400 |
1,330 |
2019 |
14,000 |
1,100 |
2020 |
11,000 |
990 |
2021 |
495 |
989 |
PRTR排出量:那須工場 ※排出量のみ(移動量除く)
年度 |
キシレン(kg) |
1.2.4トリメチルベンゼン(kg) |
2017 |
43 |
11 |
2018 |
66 |
17 |
2019 |
51 |
12 |
2020 |
50 |
12 |
2021 |
49 |
13 |
生物多様性に対する具体的な取り組み
本社周辺の緑地が「大田区保護樹林」として認定
東京計器本社ビルのある「テクノポートカマタ」は、当社の旧本社工場跡地の再開発により生まれたオフィスビル街区で、1990年9月に竣工しました。このエリアは、広大な敷地の3分の2を緑化した潤いのある環境を創出しています。
竣工後30年余りが経過し、当時植樹した樹木は樹齢を重ね、緑の少ない蒲田地区でひときわ目立つ「緑のオアシス」のような存在になっています。
テクノポートカマタの中でも、とりわけ本社ビル周辺はさまざまな樹木に囲まれていることから、大田区より本社ビル周辺の2,000㎡を超える緑地が「保護樹林」として指定されています。
大田区保護樹林
外来害虫による桜の木枯れ防止対策
佐野工場には樹齢50 年近い桜の大木が多数あり、毎年見事な花を咲かせて近隣の方々の目を楽しませています。ところが、数年前から近隣の県で外来害虫の「クビアカツヤカミキリ」による桜の木枯れ被害が問題となっており、佐野工業団地内でも被害発生の連絡がありました。そこで、当社工場敷地内の桜を点検したところ、幼虫による摂食被害の痕跡を発見したため、幼虫駆除剤の注入と成虫捕獲ネットの設置を実施しました。これからも、佐野工場のシンボルとして大切に維持していきます。